第3回のべるちゃんチャレンジ結果発表

大賞
(賞状+のべるちゃん便箋+3000のべコイン)

ジャスモールの奇跡

作者名:薊未ヨクト

のべるちゃん大賞

選評

本作は、ショッピングモール「ジャスモール」を舞台にした群像劇。一見、バラバラに見える出来事が、やがて一本の物語に収束してゆく。明らかになる真実、そして物語の結末やいかに。
緻密に計算され尽くした物語の構成には脱帽の一言。なんと、審査員一同、満場一致での大賞選出です。これは本チャレンジ初の快挙でした!
群像劇でありながらも、各シナリオに手抜きをしているところがなく楽しく読むことができ、「やりたい展開に無理矢理持っていった感」が皆無なところに作り手の力量と作品に注いだ並々ならぬ情熱を感じさせられます。
何気なくすれ違ったあの人にも今日までの人生があり、そこにいる事情があり、もしかしたら自分の人生や事情とも、知らないうちにつながっているかもしれない。ひと同士のつながりが希薄になりつつある昨今の世相とも相まって、心に響く物語でした。
エンタメ性、読後の余韻、いずれも極めて高い水準にあると言えるこの一作を、栄えある「第3回大賞」として、ここに賞します。

ピックアップ作品(1000のべコイン)

選評

ゲーマー大学生が遭遇したとある事件をオンラインゲームの向こう側の友人の力を借りて解決する、所謂「安楽椅子探偵モノ」。第1回のべるちゃんチャレンジ大賞受賞者である奈尚さんの作品になります。
シナリオの構成力・山場の作り方に定評のある作者さんの作品だけあり、物語の緩急の付け方はお見事。ドラマに思わず引き込まれます。
ストーリーラインの追い方がとてもていねいで、「読者を置いてけぼりにするまい」という気配りが随所に感じられます。
「オンラインゲームの向こう側の友人と通話を繋ぎっぱなしにしながら調査をし、解決する」というシチュエーション自体が極めて今風で新鮮。
このチョイスをあえて取った奈尚さんの「おもしろさの嗅覚」とでも言えるものに唸らされました。
引き込まれるドラマと令和らしい新鮮さを兼ね備えた本作を「ピックアップ」として推薦させて頂きます。

選評

イケてないオタク二人組が、いつも親しくしてくれる友達にプレゼントを選んであげる……と、あらすじだけ見ればシンプルですが、それだけでは終わらない魅力のある一作です。驚きの展開の数々と胸に残る読後感をぜひプレイして味わってみてください。
短い物語ながらキャラクターの造形がしっかりしており、小粒でピリリと辛い、短編らしい良さが詰まっています。二週目以降の「おまけ」の選択肢がとても有効に機能しており、ノベルゲームらしい楽しさにもあふれています。
オタク男子二人組のコミカルな漫才から始まるため、これはひょっとしてほのぼのギャグ系か?と思わされてからのギャップがとても魅力的で、ノベルの見せ方が本当に上手だなと感じました。
ともすればありがちな物語を上手にひねって独創的に仕上げたられた本作。「ピックアップ」として推薦するにふさわしい一作であると言えます。

選評

中学校の同窓会に出席した主人公と、その同窓会に来ていない、学校一の才女であった同級生との思い出にまつわるお話。
作品全体を通して雰囲気づくりが素晴らしく上手で、自分の学生時代を思わず振り返ってしまうような、ノスタルジーを感じさせる作品になっています。
登場人物や出てくる設定は割合重厚で、いくらでも話を広げる余地はあるはずなのですが、そこで物語の風呂敷を広げすぎず、あくまでも「自分とあの子の話」に徹することで「大きな世界の小さな話」として、ぐっと物語の質感が増したように感じられました。
真相をあえて言葉で語らず、最後は読者に委ねているところも物語の余韻に大きく寄与しており「書かないことで書く」という高度な技術に精通した作者の技量を感じずにはいられません。
誰もが心の中に持っているノスタルジーをくすぐる、特別に魅力的な雰囲気をまとった本作を「ピックアップ」として推薦いたします。