第1回のべるちゃんチャレンジ結果発表

大賞(賞状+のべるちゃん便箋)

ステルス・ガァデン

作者名:奈尚

のべるちゃん大賞

選評

「料理は五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)のバランスが重要だ」と言いますが、この作品をプレイした時、この作品の良さを表現する時に「五味のバランスが取れている」という言葉がぴったりだと感じました。
舞台設定も人物描写も、テーマの折り込み方のどこを見ても、破綻がなく、全体の調和が美しく仕上がっています。
物語の中に、楽しいシーンから悲しいシーン、SF的なシーンから人間の感情に深く切り込んだシーン……と、とにかく幅が広く、読者を飽きさせません。
その気になれば大長編も書けるであろう世界設定を贅沢にトリミングして一つの短篇に落とし込んでいるので、ストーリーは短いものの背景に説得力が感じられます。
また、後半にかけて物語を加速させ、クライマックスに持ってゆく手腕も見事です。
選択肢の設け方も、物語への没入を妨げない範囲の頻度・内容をわきまえている感があり、制作者のノベルゲーム制作のセンスを感じます。
何よりも、先に挙げたようなテクニカルな部分を下支えする地の文の丁寧さがとても好印象で、SF色の強い作品であるにも関わらず、最後まで「え? なんでそうなったの?」となる箇所が特に存在しなかったところに本作の完成度の高さが表れているように思います。
選考委員会による選考時にもほぼ満場一致にて文句なしの「第1回大賞」として、ここに賞します。

ピックアップ作品

選評

プレイしての第一声は「なるほど、そうきたか!」です。
「立ち絵素材の指定」という制限を逆手に取って「周囲の人間が同一人物に見えるようになってしまった」という設定に落とし込む、その発想の巧みさに驚かされました。
普通ならばそのアイデア「だけ」に留まってしまい、作劇が疎かになってしまってもおかしくないところなのですが、この作品はそうではありません。
設定を活かしきり、きちんと物語の推進力へと昇華させているのが素晴らしい。
大いに笑わせて頂きました。
加えて、テンポの良いテキスト、こなれた演出、そして推理パート等のシステム部分に至るまで「プレイヤーを楽しませよう」という配慮が感じられます。
惜しむらくはお題のテーマである「別れ」の要素が少々薄く、ゆえに今回は大賞とはなりませんでしたが、総合的な完成度の高さから「ピックアップ」としてユーザーの皆様に推薦させて頂きます。

選評

全体を通してのしっとりとした雰囲気が、応募作品の中でも随一だと感じました。
「夢を諦めて田舎に帰る」という冒頭は、お題からすれば平凡に思えますが、男がしてきた過去の努力を「男は幼い頃からずっと努力してきた」と単にまとめずに丁寧に描くことで、プレイヤーが主人公に対して愛着を持たせ、ひいては物語に興味を持たせることに成功しています。
星を一緒に見る間柄だった少女との距離の離れ方がリアルで、この部分は個人的に賞賛を送りたい部分です。
少女と再会からの展開も、急であるものの説明不足なところもなく、逆に過剰な部分もなく、物語全体を作者がきちんとコントロールできている印象を受けました。
一方で、やはり小さくまとまりすぎてしまっている感もあり、もう少しプレイヤーの心を揺さぶって欲しかった部分もあり、大賞は惜しくも逃したものの、少し不思議でさわやかな読後感と、その完成度の高さから本作を「ピックアップ」としてお勧めさせて頂きます。

選評

タイトルからしてギャグものかと思いきや、ストーリーが進むにつれてだんだんと暗雲が立ち込めていき──「これから一体どうなってしまうのか」とワクワクしながら、気づけばいつの間にかプレイし終えていました。
まずは、その構成力に称賛を贈りたいと思います。
そして、物語の脇を固めるのは個性豊かなキャラクターたち。
一癖も二癖もある彼らですが、その根底にはしっかりと人間味があり、時にくすりと、そしてほろりとさせてくれます。
ところどころで「このシーンを見せたい」という創り手の思惑が先走り、展開がやや性急になっている印象はありますが、一つの作品としてきっちりまとめ上げた手腕は素晴らしく、創り手の今後に期待せずにはいられません。
「ねぇねぇ、この作品をプレイしてみてよ!」と第三者にお薦めしたくなった、そんな私の想いから「ピックアップ」として推させて頂きます。